変換効率を高めるための研究
変換効率の低下要因で紹介した、以下の要因を改善するためにそれぞれ次のような研究が行われています。
- エネルギーバンドギャップの大きさを超える光の吸収
- 電子と正孔の再結合
エネルギーバンドギャップの大きさを超える光の吸収への対策
最適なエネルギーバンドギャップを持つ材料の開発
太陽光のスペクトルから計算すると、最も太陽光を有効に利用できるエネルギーバンドギャップは1.4eVであり、この1.4eVに近いエネルギーバンドギャップを持つ半導体としてGaAs(ガリウムヒ素)が知られています。
このため、GaAsを使用した太陽電池の研究は古くから行われており、1956年には第一号のGaAs太陽電池が開発されています(太陽電池開発の歴史参照)。
GaAs太陽電池の変換効率は単結晶シリコン太陽電池のそれよりも高く、25%程度となっており、人工衛星用などの宇宙用太陽電池として実用化されています。
GaAs太陽電池については、GaAs太陽電池のページで詳しく紹介しています。
多接合半導体の活用
GaAs太陽電池は効率よく太陽光を電気に変換しますが、それでも幅広い波長範囲をもつ太陽光の全てを電気に変えることはできません。
そこで、バンドギャップの異なる材料を重ね合わせた多接合半導体によって、幅広い領域の太陽光スペクトルを電気に変換するというアプローチの研究開発が進められています。
多接合型太陽電池については、シリコン系多接合型太陽電池や、Ⅲ-Ⅴ族系多接合型太陽電池のページで詳しく紹介しています。
電子と正孔の再結合への対策
不活化技術の開発
半導体結晶の表面にSiO2などの絶縁膜を付けることを不活化と呼びますが、この不活化により半導体結晶表面の欠陥を減らせることが知られており、この不活化を応用して結晶内部及び表面の欠陥を減らす技術の研究開発が進められています。
ヘテロ接合型太陽電池の開発
同じ結晶構造をもつn型半導体とp型半導体を接合すると、多くの場合その接合面に欠陥領域が生じてしまい、この欠陥による再結合により変換効率が低下してしまします。
一方、n型単結晶シリコンをアモルファスシリコンを挟み込んだ構造のHIT太陽電池のように、結晶構造・物性共に全く異なるもの同士を接合すると、接合面での欠陥が同一結晶構造のもの同士を接合した場合よりも減少することが知られており、この作用を利用して再結合を抑制する研究開発も行われています。
なお、このように異なる物性のもの同士を接合することヘテロ接合と言います。
その他の研究開発
上記の課題への対策とは異なりますが、受光面の電極を無くすことにより受光面積を広げる研究も行われています。
この内容についてはバックコンタクト型太陽電池のページで詳しく紹介します。
なお、変換効率の定義などについては太陽電池の変換効率のページを参照してください。