量子ドット太陽電池

 量子ドット型太陽電池は理論上の変換効率が75%と他の太陽電池と比べ非常に高い潜在性を持ち、第三世代太陽電池とも呼ばれる太陽電池です。

 量子ドットとは直径10nm程度の微細な結晶であり、周囲をポテンシャル障壁によって3次元的に囲まれた構造をしています。

 量子ドット型太陽電池では、量子ドット中に電子を閉じ込めることで生じる量子サイズ効果などの量子効果を活用して、これまでの太陽電池では吸収することのできなかった波長の光や、高エネルギーの光を有効に利用することで変換効率を高めることが可能となります。

量子ドット型太陽電池の種類

 量子ドット型太陽電池は、利用する量子効果の違いにより、以下のような3つの方式に分類することができます。

タンデム方式

 タンデム方式の量子ドット型太陽電池は、量子ドットの寸法を変えることにより吸収する光の波長を変えることができる量子サイズ効果を利用して、量子ドットの寸法を少しずつ変えたものを積層構造とすることにより、幅広い波長の光を吸収できるように構成されたものです。

 タンデム方式の量子ドット型太陽電池は、下のような構造をしています。

タンデム方式の量子ドット型太陽電池

中間バンド方式

 中間バンド方式の量子ドット型太陽電池は、量子ドット間を電子的に結合させることで生じる中間バンドを活用し、幅広い波長の光を吸収できるように構成されたものです。

 複数の中間バンドを有効に活用できるように構成した中間バンド方式の量子ドット型太陽電池の理論変換効率は75%に達するという研究結果が東京大学の荒川教授らによって報告されています。

 中間バンド方式の量子ドット型太陽電池は、下のような構造をしています。

中間バンド方式の量子ドット型太陽電池

MEG・ホットキャリア方式

 MEG方式の量子ドット型太陽電池とホットキャリア方式の量子ドット型太陽電池は共に、量子ドット中で電子のエネルギー緩和が通常の半導体よりも遅くなるエネルギー緩和時間の増大を利用し、キャリアを効果的に取り出せるように構成されたものです。

量子ドット型太陽電池の現状と今後の可能性

 量子ドット型太陽電池は、2012年時点で研究室レベルにおいて18.7%の変換効率を達成しています。

 今後、量子ドットのサイズや配置等の最適化を図ることで2020年代に30%超、2030年代に60%超の変換効率の達成が期待されています。

このページの先頭へ