太陽電池が利用できる光と利用できない光の違い
太陽電池の仕組みにも書いた通り、太陽電池は光のエネルギーによって価電子帯の電子が伝導帯に励起されて起きる光起電力効果(光電効果)を利用して発電を行います。
この時、電子が伝導帯へ励起されるためにはエネルギーバンドギャップの大きさ以上のエネルギーを電子に与える必要があります。
言い換えると、エネルギーバンドギャップの大きさ以上のエネルギーを持った光を電子に当てる必要があるということになります。
結晶系シリコン太陽電池の発電に利用できる光と利用できない光
結晶系シリコン太陽電池を例にとって、発電に利用できる光と利用できない光の境界線を確認します。
光のエネルギーは次の式のように、その波長によって決まります。
E = hν = hc / λ
E : エネルギー
h : プランク定数
ν : 振動数
c : 光の速さ
λ : 波長
この式を以下のように変形して、
λ = hc / E
次の各値を入れて計算すると、
E = 1.12eV(結晶シリコンのエネルギーバンドギャップ)
h = 4.135667516×10-15eVs
c = 299,792,458 m/s
結晶シリコンのエネルギーバンドギャップの大きさと同等のエネルギーを持つ光の波長は、
λ ≒ 1.1 μm
となります。
この結果から、約1.1μmよりも長い波長の光は結晶系シリコン太陽電池の発電には利用できないことが分かります。
なお、1.1μmは近赤外線領域(0.75~1.4μm)の光に相当するため、近赤外線の一部を除くほとんどの赤外線は結晶シリコン系太陽電池の発電には利用できないことになります。
余分なエネルギーは熱として捨てられる
1.1μmよりも短い波長の光は結晶系シリコン太陽電池の発電に利用できますが、1.1μmよりも波長が短い(エネルギーの大きい)光によって励起された電子は、余分なエネルギーを熱として放出して伝導帯に収まるため、この熱として放出されるエネルギーは電気に変換されずに無駄に捨てられることになります。