アモルファスシリコン太陽電池の特徴
アモルファスシリコンとは規則正しい結晶構造を持たないシリコンのことで、アモルファスシリコン太陽電池はこのアモルファスシリコンから作られた太陽電池です。
アモルファスシリコン太陽電池は、シリコンの結晶構造だけでなく、太陽電池としての構造も結晶系シリコン太陽電池と異なっており、結晶系シリコン太陽電池がpn接合型太陽電池であるのに対して、アモルファスシリコン太陽電池はpin接合型太陽電池となっています。
画像提供:パナソニック㈱
アモルファスシリコン太陽電池の長所
アモルファスシリコンは、原料となるシランガスを太陽電池の基材となるガラス板などに直接吹き付けてミクロン単位の膜として形成されます。
このため、高温(シリコンの融点は約1420℃)でシリコンを溶解する必要のある結晶系シリコンと比べて、原材料の製造コストを低く抑えることができます。
また、アモルファスシリコンは結晶系シリコンと原子の並び方が違う為、エネルギーバンドギャップ(※)や光吸収係数も異なっています。
※:エネルギーバンドギャップの値
結晶系シリコン:1.1ev
アモルファスシリコン:1.7eV
光吸収係数の違いにより、結晶系シリコン太陽電池が太陽光を吸収するために数百μmの厚さが必要なのに対して、アモルファスシリコン太陽電池では数μmで十分光を吸収できるという違いが生まれます。
このため、アモルファスシリコン太陽電池は結晶系シリコン太陽と比較して1/10~1/100の厚さで良く、この点も原材料コストの面で有利となります。
上記の他にも、シランガスの吹き付けによる製膜工程が200℃以下の条件で行えることから、プラスチックなどの柔軟な素材上に半導体を形成し、自由に曲げることのできるフレキシブルな太陽電池を作ることが可能という利点も持っています。
アモルファスシリコン太陽電池の長所をまとめると以下のようになります。
- 材料の製造コストが低い
- 薄膜化が可能なので材料の使用量が少なくて済む
- フレキシブルな太陽電池も製造可能
- 高温環境下での出力低下が少ない(アモルファスシリコン太陽電池の出力特性参照)
アモルファスシリコン太陽電池の短所
アモルファスシリコン太陽電池はコスト面で多くの長所を持っていますが、アモルファスシリコンの構造上その内部に多くの欠陥を持っていることなどから変換効率は9%とあまり高くありません。
また、直射日光などの強い光をあてるとアモルファスシリコン内部の水素結合が切れてしまい出力が低下します。
この光劣化現象は、発見者にちなんだステブラー・ロンスキー効果の他、初期劣化などと呼ばれ、一定期間続きますが初期値から10%程度出力が低下したところで出力は安定します。
- 変換効率が低い
- 初期劣化により出力が低下する